EV・HEVの電動化が進むなか、大電流を流す高電圧バスバーの接合に求められるのは、低抵抗と高い信頼性です。
本コラムでは、金属を溶かさずに接合する超音波金属接合に注目し、3mm厚の銅板接合やAl×Cu異種材接合への対応を解説します。
EV・HEVの普及で重要性が高まる「バスバー接合」
EV(電気自動車)やHEV(ハイブリッド車)の普及に伴い、自動車にはこれまで以上に大きな電力を、効率よく安全に流すことが求められます。
そのため、バッテリーやインバータ、モーターなどをつなぐ電力系統では、高電圧・大電流化が急速に進んでいます。
こうした電力系統で重要な役割を担うのが、バスバーと呼ばれる板状の金属導体です。
従来はワイヤーハーネスが使われる場面も多くありました。
高電流を流しやすいうえ、省スペース化や軽量化にもつながることから、近年ではバスバーの採用が拡大しています。
一方で、高電圧・大電流を扱うバスバーでは、単に金属同士を接合するだけでは十分ではありません。
接合部の電気抵抗が高くなると、電気が流れにくくなり、発熱やエネルギーロスの原因です。
また、接合強度が不足していたり、長期間の使用で品質が劣化したりすると、製品全体の信頼性にも影響を及ぼします。
そのため、高電圧バスバーでは、
- 電気を流しやすい低抵抗な接合
- 発熱を抑えられること
- 十分な機械的強度を備えていること
- 長期間安定した品質を維持できること
を同時に満たす接合技術が求められています。
当社では、こうした要求に応える技術として、
高電圧バスバーを対象とした超音波金属接合技術の開発・適用を進めてきました。
銅板接合・Al×Cu異種材接合に求められる技術課題
特に高電流が流れるパワーラインでは、十分な電流容量を確保するため、厚みのある銅板やアルミニウム板が多く使われます。
近年では、車両の軽量化やコスト低減を目的に、銅(Cu)とアルミニウム(Al)を組み合わせた異種材接合(Al×Cu)も増えています。
こうした銅とアルミニウムは、どちらも電力を効率よく伝えられる材料です。
ただし、接合時にはそれぞれ異なる課題があります。
銅は電気を流しやすい一方で熱も伝わりやすいため、接合時の熱のコントロールが難しい材料です。
一方、軽量というメリットを持つアルミニウムは、表面に硬い酸化皮膜が自然に生じ、これが残ったままでは十分に接合できません。
接合時には、この酸化皮膜を適切に除去しながら金属同士を密着させます。
銅とアルミニウムの異種材接合で見過ごせないのが、もう一つの課題です。
従来の溶融接合法では、接合部に金属間化合物と呼ばれる硬くてもろい層が生成・成長する場合があります。
この層が厚くなると、接合強度や導電性、長期にわたる信頼性へ悪影響を及ぼしかねません。
このように、高電圧バスバーの接合では、
- 電気抵抗が低いこと
- 十分な接合強度を確保すること
- 熱による影響をできるだけ抑えること
- 銅とアルミニウムの異種材にも対応できること
- 量産時にも品質が安定すること
といった複数の要求を同時に満たす必要があります。
特に、3mm厚同士の銅板接合(Cu×Cu)や、3mm厚のアルミニウム板と銅板を接合するAl×Cu接合は、
従来工法では条件設定が難しい領域です。
品質の安定化も課題の一つとされています。
超音波金属接合による低抵抗・低熱影響のバスバー接合
こうした課題を解決する方法として、超音波金属接合が注目を集めています。
超音波金属接合は、金属を高温で溶かして接合する溶接とは異なり、金属を溶かさずに接合する「固相接合」と呼ばれる技術です。
接合する材料を加圧しながら超音波振動を加えると、接合面に細かな横方向の動きが生まれます。
この動きで取り除かれるのが、表面の酸化皮膜や汚れです。
新しい金属面が現れ、加圧と振動のもとで金属同士が密着することで、強固な接合が形成されます。
金属を溶融させないため、熱による材料への影響を比較的小さく抑えられることが大きな特長です。
また、スパッタの発生や、溶融・凝固によって生じる欠陥のリスク低減も期待できます。
銅とアルミニウムのような異種材接合でも、溶融接合で課題となる金属間化合物の過度な生成を抑えながら接合できるのが強みです。
そのため、高電流用途に適した接合技術として注目を集めています。
3mm厚銅板接合とAl×Cu異種材接合への適用
当社では、高電圧バスバーを主な対象に、3mm厚の銅板同士の接合(Cu×Cu)への適用を進めています。
3mm厚のアルミニウム板と銅板を接合するAl×Cu異種材接合も、適用対象の一つです。
3mm厚の銅板やアルミニウム板は、電子部品などで使用される薄板や箔と比べて、接合に必要な加圧力やエネルギーが大きくなります。
そのため、単純に超音波出力を高めるだけでは、安定した接合品質は得られません。
重要なのは、材料の特性に合わせて接合条件を最適化することです。
例えば、
- 接合時に材料がどのように変形するか
- 接合界面へ効率よくエネルギーを伝えられているか
- ホーンやアンビルの形状が適切か
- 加圧力や振幅、接合時間が最適か
といった複数の条件を総合的に検討する必要があります。
特に銅同士(Cu×Cu)の接合では、接合界面の酸化膜を適切に除去しながら金属同士を密着させることが重要です。
ここで塑性流動(材料がわずかに変形しながら密着する現象)を適切に制御すると、電気抵抗が低く、安定した導電性を持つ接合を実現できます。
一方、アルミニウムと銅の異種材接合(Al×Cu)では、アルミニウム表面の酸化皮膜への対応が欠かせません。
異種金属の界面で発生しやすい脆化要因を抑えながら、必要な接合強度と導電性を確保することも重要です。
当社では、こうした接合条件を経験だけに頼るのではなく、
接合時の変位・エネルギー・接合時間などのプロセスデータを活用して管理しています。
こうしたデータ管理により、品質要求が非常に高い高電圧バスバーでも、接合状態を定量的に把握し、量産を見据えた品質の安定化につなげられます。
高電圧バスバー接合で期待される効果
高電圧バスバーでは、接合品質が製品性能や信頼性に大きく影響します。
超音波金属接合を活用することで、次のような効果が期待できます。
接合部の低抵抗化による発熱抑制
接合部の電気抵抗を低く抑えることで、電流が流れやすくなり、発熱や電力ロスの低減につながります。
熱影響を抑えた接合
金属を溶かさない固相接合であるため、熱による材料への影響を比較的小さく抑えられます。
溶融・凝固に起因する欠陥リスクの低減も期待できます。
Cu×Cu・Al×Cuなど材料に応じた接合提案
銅同士の接合だけでなく、アルミニウムと銅を組み合わせた異種材接合にも対応できるため、製品仕様に合わせた接合方法を提案できます。
高電流・省スペース設計への対応
高電圧バスバーの採用により、高電流への対応と省スペース化を両立しやすくなります。
プロセスデータを活用した品質管理
接合時のデータを活用することで、接合条件を定量的に管理し、品質の安定化や量産への展開を支援できます。
EVの高電圧化を支えるバスバー接合技術
今後、EVではさらなる高電圧化や急速充電への対応、バッテリーの大容量化が進むと考えられています。
それに伴い、高電圧バスバーに求められる性能も、さらに高度化していくでしょう。
高電圧・大電流を扱う製品では、接合部のわずかな電気抵抗の増加や品質のばらつきが、発熱や電力損失につながります。
こうした影響は、製品全体の信頼性にまで及びかねません。
そのため、接合技術は単に金属同士をつなぐ工程ではなく、電動化製品の性能や安全性を支える重要な要素の一つです。
当社は、超音波金属接合をはじめとする各種接合技術の開発を通じて、高電圧バスバーや異種材接合といった新たなニーズに対応しています。
今後も、お客様の製品や用途に応じた最適な接合技術を提案し、高信頼・高効率なものづくりを支えるパートナーとして、電動化社会の発展に貢献してまいります。