超音波金属接合技術

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金属接合の種類

POINT

接合の原理によって分類される

現在、金属を接合するために多種多様な工法が開発されていますが、
一般にこれらの工法は接合の原理から、「融接」「固相接合」および「ろう接」の3つに分類されます。

1.融接(ゆうせつ):接合界面が液相と液相の接触による溶接(Welding)
被接合金属の接合部を加熱し、溶融させて接合する方法です。代表的なものとして電気・ガス・レーザ溶接があります。

2.固相接合(こそうせつごう):接合界面が固相と固相の接触による接合(Solid State Bonding)
被接合金属に機械的圧力を加え、接合界面に局部的な塑性変形を生じさせ、接合する方法です。拡散接合や超音波金属接合が挙げられます。

3.ろう接(ろうせつ):接合界面が液相と固相の接触による接合(Brazing ブレージング)
被接合金属よりも融点の低いロウ材を接合界面に流し、接合する方法です。各種ロウ付けがこれに当たります。

金属接合については、材質、形状の他に表面状態や表面処理によって最適な接合工法を選択する事となります。
接合の信頼性、コスト等による工法の選択についても重要な要素となっています。

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超音波とは?

POINT

聞くことを目的としない「音」

一般的には「周波数が高く、耳に聞こえない音」と認識されている超音波。
広辞苑では「振動数が約2万ヘルツ以上で、定常音として耳に聞こえない音波」と定義されていますが、産業界では「聞こえない」ではなく、「聞くことを目的としない」音を超音波と呼んでいます。

音の正体

私たちが普段聞いている「音」の正体とは何でしょうか?
話し声はもちろんですが、スピーカーから出る音やバイオリンの奏でる音は、どのようにして「聞こえる」となるのでしょうか。

たとえば、バイオリンでは絃が震えることによって、その振動が空気を伝わって耳に届きます。
この振動が耳の鼓膜を揺らし、脳が音として認識します。つまり、音の正体は「振動」なのです。

振動は、気体・液体・固体を「波」のように伝播していきます。
この音の波のことを「音波」と呼びます。

音を表す単位

音の振動数は「周波数」と呼ばれ、Hz(ヘルツ)という単位で表されます。1秒間に1回振動する場合、1Hzとなります。<振動回数が少ない=周波数が低い>ほど低音に聞こえ、<振動回数が多い=周波数が高い>ほど高音となります。バイオリンの絃を押さえる位置によって音の高低が変化するのも、振動回数(周波数)の変化によるものです。

聞こえるのに超音波?

一般的に人の可聴域(聞こえる周波数)は20Hz~20kHzとされていますが、超音波機器の中には耳に聞こえる周波数帯を使っているものもあります。当社製品にも可聴域の周波数である15,000ヘルツ帯を使用した製品があり、「耳に聞こえる音」ではありますが、聞くことを目的としているわけではありません。よってわれわれの定義上は「超音波」として扱います。

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超音波振動の原理

POINT

振動子により高周波電力を超音波振動に変換

音の正体は「振動(音波)」です。
では、この振動を産業に応用するための超音波振動をどのように発生させているのでしょうか?
超音波の原理を説明します。

振動は機械的な運動ですので、エネルギーと動力部が必要になります。自動車でいえば、ガソリンとエンジンに当たる部分が必要になるわけです。超音波振動におけるガソリンは高周波電力、エンジンは「超音波振動子(ちょうおんぱしんどうし)」と呼ばれています。

高周波電力が振動に変わる原理は、火打石をイメージするとわかりやすいかと思います。火打ち石は叩くと火花が出ます。この時、叩くことで石は一瞬縮みますが、元に戻ろうとする力が働き、これが<電気エネルギー=火花>となって現れます。

この原理を逆手に取り、発振器内で圧電素子の石に電気エネルギーを供給することで振動を発生させています。

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超音波金属接合と超音波金属接合機

POINT

超音波振動により金属同士の固相接合を行う

「超音波金属接合」とは、重ねた金属同士を超音波振動によって接合する技術です。
同材質の接合の他、銅とアルミなど異種材の接合も可能で、ターミナル端子、丸端子へのCu線接合、線材同士の接合などに利用されています。

超音波金属接合とは

自動車のEV化にともない、電池、モータ、インバータなどの大きな電流が必要な回路関係の接合や、軽量化に伴うアルミ線の接合も増えてきております。超音波金属接合では、ハンダなどを使わずに金属同士を直接接合するため、高温に達する部品にも適しています。溶接などに比べ熱影響範囲が狭いため、熱に弱いLiイオンバッテリー関連の接合に利用することもできます。

金属同士が接合できる理由(わけ)

一般に、金属は表面が酸化物、吸着ガスなどの表面層によって覆われているため、接合界面の原子同士の接近が妨げられ、十分な結合力が得られません。しかし、超音波金属接合では、接合界面で発生する摩擦により、これら表面層が機械的に破壊除去されるため、接合が可能になります。

同時に、発生する摩擦熱により塑性流動が促進され、接合界面の金属の原子同士が相互に引力を及ぼす距離まで接近し、接合界面全体の原子が秩序ある配列となるよう接合することとなります。

融解には至らずに接合するため、「固相接合」に分類されます。

超音波金属接合機の基本構成

超音波金属接合機は、主に発振器と振動部ユニット、プレス装置と工具ホーン(超音波ホーン)で構成されます。

工具ホーン(超音波ホーン)は、振動部ユニットで発生した振動を増幅し、ワークに伝達することで接合を行います。
また、プレス装置を使用せず発振器と振動部ユニットと工具ホーンの組合せの機器もあります。

発振器

高周波電力の供給と共に、共振周波数の制御などを行っています。共振周波数は使用する工具ホーン(超音波ホーン)ごとに異なり、動作時の温度によっても変化します。また、接合中の加圧によっても変動するため、最適な周波数に調整する「周波数追尾回路」を搭載しています。

当社の超音波金属接合機は「定振幅回路」を搭載しています。定振幅とはホーン先端振幅を一定にする機能となっており、接合時の加圧力などにかかわらず常に設定した振幅になるように作動し、安定した接合ができるように制御しています。超音波振動用の電力供給と制御を行っているため、「発信器」ではなく「発振器」と表記します。

振動部

振動部は、振動子と振幅を増幅する固定ホーンで構成されています。固定ホーンの振幅をさらに増幅し、ワークに伝達するのが工具ホーン(超音波ホーン)です。工具ホーンは用途やワークにより、さまざまな形状で製作されます。

工具ホーンは無暗に追加工をしてしまうと、共振周波数のズレや振動モードの悪化に繋がる可能性が高く、接合不良やホーンの破断リスクに繋がります。そのため当社では、お客様による工具ホーンの追加工はしないようにお願いしております。

超音波金属接合のポイント

超音波金属接合のポイントとしては、「受け台(アンビル)」の上で重ね合わせた同種、もしくは異種の金属に対して、垂直方向の加圧力を与えながら、接合面に平行な超音波振動を加えることです。超音波振動によって互いに擦れ合うことで、酸化皮膜や付着物が取り除かれ、純粋な金属面が露出することにより、固相状態のまま接合を行うことができます。

超音波金属接合のメリット
  1. 異種金属の接合が容易
  2. 融点以下の温度領域で接合
  3. 非鉄金属の接合に向いている
  4. 箔等の薄い接合が可能
  5. 経年変化(抵抗値の増加)に強い
  6. 環境性能が良く作業が安全
  7. リサイクル性が良い

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接合可能な材質

POINT

材料硬度・融点・再結晶温度が目安

接合可能な材料として、一般的には亜鉛、鉛、錫をのぞく「非鉄金属」が適していると言われています。
「非鉄金属」とは「鉄に非ず」、つまり「鉄以外」の金属をさします。

金属を摩擦により接合させた場合、接合界面では機械的な磨耗とともに摩擦熱による接合界面近傍の融解、さらに機械的性質低下による塑性流動が生じます。このため金属の接合適合性を評価する際には材料硬度、融点や再結晶温度が目安となります。

一般的には亜鉛、鉛、錫をのぞく非鉄金属が適し、銅、アルミニウム、ニッケル、貴金属(金、銀、プラチナ、パラジウム)及びこれらの材料がコーティングされているものが望ましいとされています。

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法的規制

POINT

型式指定を受けた装置は、個別の申請を免除されます

原則として、超音波機器は申請と届出が必要であることが法律(電波法第100条)で定められていますが、
申請・届出が不要な機器(型式指定)というものがあります。

無線設備、通信設備以外の設備であって10kHz以上の高周波電流を利用して高周波エネルギーを発生させて、50Wを超える高周波出力を使用する設備は、原則として総務大臣の設置許可を受ける必要があります(電波法第100条)。

ただし、シリアル銘板シールに型式指定番号が記入された装置は総務大臣による型式指定(技術基準に適合していることの指定)を受けており、個別に設置許可を申請する必要はありません。
※日本国外で使用する場合は、その国や地域の定める法律に従ってください。