POINT
多彩な食品に対応する切断性能と、安全に使うための心得
超音波フードカッターは、やわらかい菓子やパンからかたい冷凍食品まで、さまざまな種類の食品に対応します。
加工対象の特性に応じた利用例と、刃のメンテナンスや冷却対策、防水対応といった使用時の注意点を押さえることで、安全に運用することができます。
超音波フードカッターの利用例
超音波フードカッターは、やわらかくて崩れやすい食品から、かたくて切りにくい食品まで、幅広い加工用途で活用されています。
ここでは、食品の性質に応じて分類した代表的な使用例をご紹介します。
やわらかい食品のカット
超音波振動による「刃の高速微振動」が素材の付着を大幅に低減することで、切断時の引きずりが大幅に減ります。
例えば、クリームを切る際に包丁を温めることで切りやすくなるのは、包丁に触れたクリームを溶かしながら切ることで、付着を防いでいるからです。
また、粘性の高い素材を切る場合に刃を濡らすと切りやすくなるのも同じく付着を防ぐためです。つまり、刃に素材がこびりつくと切りづらくなるのです。
超音波フードカッターは、刃が1秒間に数万回、数ミクロン(髪の毛の10分の1程度)の微細な動きを繰り返すことで、素材を常に振るい落とします。
そのため素材の付着がほとんどなく、刃の進入がスムーズとなり、食品を崩さずカットすることが可能となります。
製菓・製パン:洋生菓子・和菓子・パン類
加工食品:豆腐・厚揚げ・加工肉など
野菜類:きのこ(切り分け)
米飯類:もち
かたい食品のカット
まず、やわらかい食品と同様に、超音波振動が加わることで刃の側面と素材の摩擦が減り、材料表面の滑りが良くなるため、よりスムーズなカットが可能となります。
また往復振動という特性により、切断箇所の表面数ミクロンに対して「切っては離れ」を繰り返しています。これは、常に包丁を全力で振り下ろし続けているようなイメージです。
これは、食材に包丁を当ててからグッとチカラを入れる場合と、包丁を振り下ろした場合では、振り下ろした方が「良く切れる」ことに似ています。
野菜類:かぼちゃ・スイカ・イモ・きのこ(石づき)
冷凍食品:-20℃の冷凍ケーキ・冷凍チーズ・冷凍バターなど
やわらかい素材とかたい素材が混在している食品
たとえば「ナッツ入りパウンドケーキ」のように、やわらかい生地と硬いナッツが混ざった食品は、普通の包丁ではきれいに切るのが難しいものです。
刃がナッツにぶつかって止まり、強く押すと生地がつぶれたり、ナッツが割れたりして、切断面がボロボロになってしまうこともあります。
超音波フードカッターは、ごく小さな距離で大きな力を繰り返して素材にアプローチするため、やわらかい部分にも硬い部分にも、それぞれに適した特性が働きます。
前準備をほとんど必要とせず、押しつぶしや割れを防ぎ、見た目や仕上がりの美しさが求められる現場でも安心してお使いいただけます。
ナッツ入りのケーキやパン
レーズン入りの焼き菓子・製パン製品

超音波フードカッターが苦手とするコト
超音波カッターは、さまざまな食品を美しくスムーズにカットする一方で、生肉・レタス・魚などの「繊維質が多い食材」は少し苦手としています。
カットが中途半端になったり、繊維がちぎれるような仕上がりになることもありますが、その理由は、超音波フードカッターは「押し切り」の能力を大幅に高めた技術であるためです。
繊維が柔らかくしなると、刃が当たっても逃げてしまい、数ミクロンの振動距離ではチカラを伝えきれず能力を活かしきれません。
このような食材には「引き切り」の要素が重要となります。刺身包丁が長いのは、引き切りをスムーズに行うためにも合理的と言えます。
このような食材の場合、カットするときの食材の加工状態やカットの要件によっては、振幅や刃(工具ホーン)を工夫することで加工できる場合もあります。
生肉・レタス・魚などの繊維質が多いもの
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使用の際の注意点
超音波フードカッターは、高精度で美しい切断が可能な一方、その性能を十分に発揮し、安全に運用するためには正しい取り扱いが不可欠です。
ホーン(刃)のメンテナンス
工具ホーン(カッター刃)は、超音波振動を正確に伝える要となる部品でもあります。
食材の付着は殆んどありませんが、水溶性の成分を全て飛ばし切ることはできません。乾燥後に固体として付着してしまうと加工に影響する他、刃の振動を阻害する要因にもなり得ます。そのため、日常的な清掃と定期的な点検、適切なタイミングでの刃の交換が欠かせません。刃の状態を把握し、計画的なメンテナンススケジュールを立てることが、安全性と加工品質の維持につながります。
長時間の連続運転時は冷却対策を
長時間の連続使用や食材からの熱伝導により、工具ホーン(カッター刃)や振動子に熱が蓄積すると、発振効率の低下や振動の乱れによる刃の破損を引き起こす可能性があります。
このため、定期的な冷却工程や冷却装置の併用が推奨されます。連続加工が多い環境では、冷却対策が装置の寿命や安定稼働に直結します。
防水・衛生環境への対応
超音波フードカッターは「産業用電子機器」であるため、振動部および発振器※へ水や洗浄液が侵入しないような環境での使用が必要です。
特に食品加工現場では、機器の洗浄・殺菌を想定した構造かどうかを確認のうえでご導入ください。
※超音波カッターの基本構成についてはこちら