超音波カッターの原理

POINT

超音波カッターが切れる理由とは

超音波カッターは、刃先に超音波振動を加えることで、プラスチックやゴム、複合材など多様な素材を高精度かつ低負荷で切断できる加工機器です。
通常の刃と比べ、プラスチックに対しては超音波振動による溶融が大きな要素となります。ダンボールや繊維では、摺動抵抗の差が大きな違いとなって現れます。

超音波カッターとは

超音波カッターとは、刃先に超音波振動(一般に20〜30kHz)を加えることで、対象物をスムーズにカットすることができる加工機器です。一般的な刃物と異なり、超音波による微細な振動が加わることで、軽い力でも対象物をカットすることができます。これは装置内部に搭載された振動子が、電気信号を超音波振動に変換し、刃そのものが1秒間に数万回の微細な往復運動(数十ミクロンの振幅)を繰り返すことで、切断に優位なチカラが働くためです。
超音波カッターは、プラスチック、ゴム、フィルム、複合材など、通常のカッターでは切断が難しい素材にも対応できるのが特長です。摩擦が少なく、素材の変形やバリの発生も抑えられることから、精密加工や自動化ラインにも適しています。

そもそも「モノを切る」とは

包丁、ハサミ、ノコギリなど、モノを切るための刃物には、その用途に合わせたさまざまな形状が存在します。これらは当然「その方が切れるから」「切りやすいから」ということになりますが、モノを切るための要件とは何でしょうか。

物を切るとは、「外力によって対象物の構造を局所的に破壊・変形し、分断する行為」です。刃物が対象物に接触する際には、非常に小さな面積に圧力が集中します。これが「応力集中」を引き起こし、物質が「せん断破壊」されることで切断が実現します。この破壊が効率的に起こるかどうかは、刃の鋭さ、摩擦(刃先・側面)、速度、材料の特性など多くの要因に左右されます。

なぜ超音波で「よく切れる」のか

通常の刃物でも超音波カッターでも、「力を加えて押し切る」「刃を動かして引き裂く」といった物理的な作用に違いはありません。しかし、通常の刃物では柔らかい素材が変形しやすかったり、切粉が生じたりすることが多く、特に切断面を平滑に仕上げることが難しかったりします。この違いは何なのか。刃物に超音波振動を加えることによって強化、減衰される要因があり、この差が切れ味の差に繋がっています。また、材料ごとに切断に優位な要因は異なるので、プラスチックとそれ以外のモノを切る際では主な要因が異なります。

プラスチックの切断

超音波溶着機に代表されるように、超音波振動のエネルギーは摩擦や衝突によって熱に変換され、プラスチックを溶かすことが可能です。超音波カッターは、刃先で同様の振動を繰り返しているため、接触した樹脂を溶かし切る(溶断する)特性を持っています。また、刃側面と材料が接触する部分の摩擦抵抗が少なくなり、スムーズな進入を可能にしています。これらの追加作用によって、少ない力でも「よく切れる」という結果を生んでいます。

プラスチック以外の切断

繊維(紙・布など)

紙や布など繊維の集まりを切断する際に多く利用されるハサミは、上下の刃で挟み込むことで局所的に大きな力を加えて切断します。超音波カッターでは、この局所的な圧力の代わりに1秒間に数万回繰り返す振動から得られる刃先の摩擦力と速度を利用しています。同時に、刃側面と材料との摩擦抵抗は少なくなるため、切断面から繊維を引きずり出すことが少なく、紙紛などの切りくずの発生が少なくなります。

食品

食品向けの超音波カッター(超音波フードカッター)では、刃側面に付着する食品を常に振るい落としているので、刃の進入による引きずりを最小限に抑えます。また、超音波カッターの振動は往復運動であるため、数十ミクロンの押し切りを1秒間に数万回繰り返しているような形になります。これによって、食品を崩すことなく刃がスムーズに進入できると同時に、断面をキレイに保つことができます。これが切れ味の良さとして評価されています。

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