ものづくりの現場では長年、「熟練の職人技」が製品品質を支えてきました。 ウェルダー加工の分野でも、素材のクセを見抜いて加熱時間や圧力を調整する――そんな勘と経験の技術が必要とされる場面もあります。
しかし、職人技であるからこそ、作業の属人化や技術継承の難しさが課題となり、量産化・品質の安定における大きな壁となっています。
いま求められているのは、「誰がやっても、同じ品質で再現できる」技術です。本稿では、塩ビ素材のばらつきという難題を、装置そのものの力で克服する最新の高周波ウェルダーの活用と、その現場改善効果についてご紹介します。
1. ウェルダー加工とは? ものづくりを支える「熱と圧力」の技術
ウェルダー加工とは、高周波や超音波、熱板などを使って部材を溶着する技術の総称で、特に「高周波ウェルダー加工」を表す際に使われます。高周波ウェルダーは、樹脂素材(主に塩化ビニル)に対して強固で美しい接合を実現できる加工方法として知られています。対象物(ワーク)に高周波を照射すると、誘電分極という現象で内部から熱が発生。これに圧力を加えることで、素材が溶け合い、冷却されて一体化します。溶剤や接着剤を使わず、溶着強度と外観に優れた仕上がりが得られます。
このため、高周波ウェルダーは医療用具(輸液バッグ、チューブ)、文房具、玩具、車両内装、化粧品容器、建材など、あらゆる業界で活躍しています。
塩ビ素材に潜む「厚みのばらつき」という難題
ウェルダー加工で頻繁に用いられる塩ビ(PVC)は、柔軟性や加工性に優れた素材ですが、製造過程で厚みにばらつきが生じやすいという性質があります。一見すると均一に見えるシートでも、ロールの部位によって厚みが数ミクロン単位で違っていたり、シート全体にわずかな勾配があったりするケースは少なくありません。
このような厚みの違いは、高周波加熱のムラを引き起こし、溶着不良の原因になります。
発生する不具合の例
外観不良
外観品質のばらつき(波打ち、にじみ、剥がれ)
つまり、「素材が同じでも、加工条件を一定にすれば必ず安定するとは限らない」――これが、現場での悩みの種だったのです。
職人の経験と勘に頼ってきた加工現場
これまで、こうした塩ビの個体差をカバーしてきたのは熟練の技術者たちの経験と感覚でした。
「この材質は少し厚めだから出力を下げよう」
「冬場は冷えやすいから加熱時間を少し長めに」
「端部が溶けやすいから、金型のエッジを調整しよう」
そんな微調整の積み重ねが、不良率を下げ、品質を維持してきたのです。しかし、これらはすべて属人化された技術であり、マニュアル化が難しい領域。職人の退職や異動でノウハウが失われたり、若手の育成に時間がかかったりと、再現性に大きな課題を抱えていました。
特に量産ラインでは、「誰がやっても同じ品質を出せる」ことが求められるため、勘やコツに頼る体制では限界があります。
2. 高周波ウェルダーの進化が“技術の標準化”を実現
こうした課題に対して、精電舎電子工業では装置によって解決できないかと試行錯誤を重ねてきました。その結果、当社の高周波ウェルダーでは、熟練技術者の作業を数値化・自動化することで、「誰が使っても、同じ品質を出せる」機能を実現しています。
〈当社の高周波ウェルダーのメリット〉
条件自動選択機能(オプション):素材の厚みに応じて瞬時に溶着条件を選択
発振器保護回路:発振器の定格を超えた電流が流れると発振を即座に停止し、発振器の故障を防ぐ
超高感度スパーク防止装置:スパーク発生の予兆を検知して発振を停止する
自動同調:設定値を保つように自動で同調位置を追尾する
これにより、職人技に依存せず、装置が常に安定品質を担保する体制が整います。
不良率の低減と量産現場の変革
実際に当社のウェルダー加工機を導入した現場では、以下のような効果が報告されています:
☞不良率の大幅削減(当社比:最大50%以上)
☞歩留まりの安定
☞段取り時間の短縮
☞教育コストの削減
加熱時間や同調位置が含まれる溶着条件の自動選択によって、作業者が毎回手動で微調整する必要がなくなり、ヒューマンエラーや過加熱によるリスクが減少。安全性の向上にも寄与しています。
町工場のような少人数の現場でも、短納期・高品質な対応が可能になり、大手製造業ではスマートファクトリーへのステップとして可能性が広がります。技術者不足、技能継承の問題、設備の老朽化など、あらゆる現場課題に対して、「装置による再現性の確保」というアプローチは大きな突破口となるでしょう。
3. 再現性こそ、これからの生産設備の価値
「技術は職人がつくるもの」――そんな時代は確かに存在しました。しかし今は、「装置が品質を守る時代」に移り変わろうとしています。
特にウェルダー加工のように素材の個体差が品質に直結する工程では、再現性こそが品質の核心。誰が使っても同じ結果が得られる設備は、安定生産・効率化・省人化に直結する、まさに“攻めの投資”と言えるでしょう。
塩ビ素材のばらつきに悩む現場ほど、装置の力を活かせる余地があります。高周波ウェルダーの進化は、現場の働き方と品質を、着実に変え始めています。
精電舎電子工業では、プラスチック溶着に関するご相談を常時承っております。装置選定から加工条件の最適化まで、現場の課題に合わせたご提案が可能です。お気軽にお問い合わせください。
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