現場課題を解決するはんだ付け技術とは?

はんだ付けは、電子機器や自動車部品、産業機器など多くの製造業において不可欠な接合技術です。導通性の高い接合を低コストかつコンパクトに実現できることから、配線や部品接合の場面で広く活用されています。しかし、製品の高密度化・軽量化・多機能化が進む中で、従来のはんだ付け技術だけでは対応しきれない課題も増えてきました。「はんだがうまく乗らない」「安定した品質が出ない」——そんな現場の声に応える技術をご紹介します。

目次
  1. はんだ付けの重要性と現場での課題
  2. 多様な接合課題に“選べる”柔軟対応

1.はんだ付けの重要性と現場での課題

はんだ付けの原理と基本役割

はんだ付けとは、金属同士を合金化して接合する技術です。一般にはんだ合金(スズや鉛など)を熱で溶かし、母材表面に広げて接合部を形成します。電気的・機械的接続を同時に満たすことが特長で、電子部品の取り付けやワイヤー処理など幅広く使われています。

製造現場でよくある課題

①ワイヤーの処理が手間

ワイヤーの端部にあらかじめはんだを付ける作業は、手間がかかり、作業者の熟練度によって品質のばらつきも生じます。特に複数本のワイヤーを処理する現場では、1本ごとの処理時間が積み上がり、生産効率を大きく左右します。

②アルミ線など難接合材の対応

アルミニウム線は軽量で導電性も高く、コストメリットもあるため採用が進んでいますが、表面の酸化被膜がはんだ付けを阻害するため、従来の方法では安定した接合が困難です。

③安定した品質の確保が難しい

手作業ではんだ付けを行う場合、接合部の温度・量・タイミングのばらつきにより、仕上がり品質が不安定になります。特に量産工程では、不良率の増加や再作業コストが大きな課題になります。

④人手によるはんだ付け

慢性的な人手不足と技能者の高齢化が進む中、はんだ付けの効率化は喫緊のテーマとなっています。現場においては「人手による再現性の確保」よりも「機械による安定品質」を求める動きが加速しています。

超音波技術を活用した接合課題の解決策

【課題解決①】アルミ線にも対応!  超音波振動を応用したはんだ槽技術

超音波振動付きはんだ槽 アルミ線の接合が難しい理由:酸化被膜の壁

アルミニウムは空気中で酸化しやすく、表面に酸化皮膜が形成されます。この被膜は非常に硬く、一般的なはんだ合金では濡れ性が悪く、接合が成立しません。このため、従来はアルミ線のはんだ付けは避けられてきました。

アルミ線もはんだ付け可能にする、超音波振動付きはんだ槽

当社では独自技術として、超音波振動を付加したはんだ槽を開発・提供しています。はんだ槽内に超音波振動を加えることで、キャビテーションと呼ばれる微小な気泡の発生と急激な崩壊が繰り返される現象が生じます。このとき気泡が弾ける瞬間に発生する局所的な衝撃が、アルミ表面の酸化被膜を効果的に破壊。これにより、はんだがしっかりと金属表面に濡れ広がる状態を実現できます。
当社の超音波振動付きはんだ槽は、振動体の位置が近く出力も強力なため、ハーネスなどの太線へのはんだ付けに最適です。また、振動体はねじ(工具ホーン)で固定されており、部品の取り外しや交換が容易であることから、メンテナンス性にも優れています。特に振動板は消耗品であるため、このメンテナンス性の高さは、多くのお客様から高い評価をいただいています。

フラックス不要で環境にやさしい

はんだ付けで使われるフラックスは、酸や有機物などの化学物質を含むため、製造工程や廃棄時に水質や土壌汚染の原因となる可能性があります。 さらに、はんだ付け後の洗浄工程ではフラックス残留物を除去するための廃水が発生し、適切な処理がなされないと環境負荷が増大します。 また、フラックスの煙や残留物は作業者の健康にも影響を及ぼすため、作業環境の管理が重要です。こうした課題から、フラックス不要のはんだ付け技術は、環境負荷軽減と作業効率向上の両面で注目されています。

超音波振動付きはんだ槽による、アルミ板へのはんだ付け

アルミ板へのはんだ付けの比較
左)超音波発振なし 右)超音波発振あり

超音波振動付きはんだ槽の導入について相談する

【課題解決②】進化する超音波金属接合技術

超音波金属接合装置 フラックス不要・加熱不要な“超音波金属接合”

さらに、当社では“はんだすら使わない”接合技術として、超音波金属接合装置も提供しています。この技術は超音波振動により金属表面の酸化膜を破壊・除去し、固相状態での接合を実現します。超音波振動付きはんだ槽が苦手とするφ1.2mmのアルミ線の接合も、この装置なら対応可能です。加熱やフラックスを一切使わず、人にも環境にもやさしい工法となっています。

溶接では難しい異種金属接合にも対応

超音波金属接合は、銅×アルミ、銅×ニッケルなど、溶接では困難とされる異種金属の接合にも対応できます。熱影響範囲が少なく、クリーンで確実な接合を実現。EV部品や軽量化構造材など、次世代製品への応用も広がっています。

スモールスタートも本格量産も ― あらゆるニーズに応える設備体制

当社では、試作・評価から量産設備の導入まで一貫した対応が可能です。超音波振動付きはんだ槽や金属接合装置など、お客様のフェーズに応じた最適な設備をご提案し、段階的な導入支援を行います。

超音波金属接合機について詳細はこちら

2.多様な接合課題に“選べる”柔軟対応

アルミ線の接合も、[はんだあり/なし]どちらも対応可能

「超音波振動付きはんだ槽」「超音波金属接合」といった2つの技術を保有している当社なら、材料・コスト・品質要件に応じて最適な工法を選択できます。現場の課題や製品仕様に合わせて、フレキシブルに対応いたします。

技術を組み合わせて最適解を導く

接合に正解はありません。製品仕様・生産条件・目標コストに応じて、最も適した接合方法を選ぶ必要があります。当社では、複数の接合技術を組み合わせて、製造現場のリアルな制約を踏まえたご提案も可能です。選択肢を持つ当社だからこそ、お客様にとっての“最適解”を導き出すご支援を行います。

はんだ付けや金属接合に関するお悩みがございましたら、どうぞお気軽に精電舎電子工業までご相談ください。
お客様の課題に寄り添いながら、試作から量産まで一貫して丁寧にサポートいたします。

公開日:2025/09/01

カテゴリー:装置関連