超音波カッターの仕組みや特長から、その使い方や選び方を解説していきます。業務用とホビー用の違いを知ることで、思わぬ事故や故障を防ぐことにも繋がります。
1.超音波カッターとは?
超音波カッターは、刃を超音波で振動させて対象物をカットする工具です。軽い力で滑らかにカットし、切断面をきれいに仕上げるのが最大の特徴です。通常のカッターでは切断しにくいダンボールやプラスチック、ゴム製品、不織布などの素材をカットするのに適しています。また、食品カット用の超音波フードカッターは、サンドイッチやケーキなどの崩れやすい食品を形を崩さずにきれいにカットすることができます。
超音波カッターの仕組み
超音波カッターは、刃を1秒間に20,000~30,000回振動させて対象物をカットします。これを実現するために、「振動子」とその動作を制御する「発振器」から構成されており、振動子内には圧電素子と呼ばれるセラミックスが組み込まれています。圧電素子は電気エネルギーを機械的振動(超音波振動)に変換し、この振動が共振することで刃を高速で伸縮させ、対象物を切断(溶断)します。
超音波カッターの基本的な特長
超音波カッターは、刃を超音波で振動させて切断を行います。これにより、少ない力で効率的にカットすることができます。特にプラスチック材では、超音波振動によって溶けながら切るため、非常にスムーズな切断が可能です。この振動が刃と対象物の接触点での摩擦を減らし、少ない力でも切断を実現します。主な特長は以下の通りです。
- 切断後の切り粉や削りカスが少ない:対象物をカットした後、従来のカッターに見られる切り粉や削りカスがほとんど出ません
- 切断面が滑らか:使用後、非常に滑らかな切断面が得られます
- 少ない力でカット:力をそれほど入れなくても簡単にカットできます
- ほつれ止め機能:化学繊維材料をカットする際、溶かしながら切るため、切断面のほつれを防ぐ効果があります
- 自動化が容易:コンパクトな設計で、多関節ロボットなどの自動機への搭載が容易です
超音波カッター製品一覧ページ
2.超音波カッターの使い方と安全性
超音波カッターは、力を使わず簡単にカットできる工具です。正しい使い方をすれば、長時間、安定したカットを行うことができます。
初心者でも簡単に使いこなすコツ
対象物をカットする際、つい力を入れてしまいがちですが、超音波振動を妨げないためにも軽く手を添える程度の力で使うことが重要です。過剰な力を加えると対象物を損傷させたり、刃の摩耗を早める原因になります。均一な圧力でカットすれば切断面が滑らかできれいな仕上がりになります。
超音波カッターの安全性
超音波カッターは大変便利ですが、超音波振動を利用して材料を切断する工具であり、使用時には注意が必要です。以下のポイントを守ることで、事故や怪我のリスクを最小限に抑えることができます。
- 保護具の着用:飛散物から身を守るため、保護メガネや防刃手袋を着用しましょう。
- 機器の点検:使用前に超音波カッター本体や刃に損傷や異常がないかを確認します。刃が汚れている場合には清掃し、変形や欠損があれば交換しましょう。
- 使用中の注意:使用中はカット面に手を近づけないようにし、発振は使用中のみ行ってください。
- 使用後のメンテナンス:作業終了後は、超音波カッターを清掃して保管しましょう。
これらのポイントを守ることで、「電源を入れたが動かない」「刃が異常に熱を持った」などの不具合を防ぎ、装置の耐用年数を伸ばすことにもなります。
3.超音波カッターの選び方
超音波カッターの選ぶ際のポイントを解説します。製品選びの参考にしてください。
超音波カッターの選び方のポイント
超音波カッターには、趣味用と業務用の2種類があります。どちらも十分な切断能力があり、細かい部分や複雑な形状のカットができます。
【ホビー用】
出力が弱いですが、3分程度連続運転が可能で、手軽さと持ち運びやすさが特徴です。
【業務用】 出力が高く、厚みのある材料のカットや長時間の連続作業が可能です。
しかし、刃が熱を持つことがあるため、エア冷却機構が必要です。またホビー用に比べて重量があります。
予算に合わせた超音波カッターの選び方
【ホビー用】
10万円以下で購入できることが多いですが、出力が小さく、工業用製品には十分なカットができない場合があります
【業務用】 機能や性能により価格が大きく異なります。購入前にカットテストを行い、必要な機能をしっかり検討しましょう。
工業用超音波カッターはこちら
4.超音波カッターの活用事例
超音波カッターは非常に便利な工具でですが、切断するのが得意なものと苦手なものがあります。
切れるもの
プラスチック:熱で溶けるプラスチックは、きれいに切ることができます
紙:薄い紙から段ボールまで、さまざまな厚さの紙をカットできます
不織布:切断面を溶かしながら切るため、ほつれ止めに最適です
ゴム:通常の刃物では切りにくいゴム材も、スーッとカットできます
金属:アルミや銅など、比較的やわらかい金属や薄い箔であれば切断可能です
食品:ケーキやトマトなどの柔らかい食材から、凍ったケーキまできれいにカットします(超音波フードカッター)
切れないもの
金属(硬いもの)、ガラス、磁器、振動に弱いもの
DIYやハンドクラフトへの利用
超音波カッターは、切断面のきれいさやカットの容易さから、DIYやハンドクラフトの分野でも広く利用されています。例えば、プラモデルやラジコン模型作りでは、細かな部品の切り出しや完成品の微調整などに役立ちます。またアクリルや樹脂素材を使用したアクセサリー作りにも適しています。このような用途の場合、ホビー向けとして販売されている超音波カッターが最適です。
プロフェッショナルが使う理由
超音波カッターでできることは、家庭用も工業用も基本的に大きな違いはありません。しかし、工業用の超音波カッターでは特に以下の点で差が出ます。
発振器と振動子、刃(ホーン)の組み合わせ
これらの組み合わせにより、パワーや切れ味が変わり、対象物に対する切断能力に大きな差が生まれます
刃(ホーン)の形状
刃の形状によって、切断できる対象物に差が出ます
刃の摩耗や切断面の品質
工業用は、刃の摩耗や切断面の仕上がりに大きな差が出るため、購入の際にはメーカーでカットテストを行い、目的に合った製品を選ぶことが重要です
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