技術情報 | TECHNICAL INFORMATION

超音波応用技術

超音波応用技術は、以下にご紹介する様に多岐に渡っております。
プラスチックの二次加工に限らず、金属接合やその他の用途にも、広くお役立ていただいております。

超音波とは?

聞くことを目的としない「音」

一般的には「周波数が高く、耳に聞こえない音」と認識されていることが多いようです。広辞苑では「振動数が約2万ヘルツ以上で、定常音として耳に聞こえない音波」と定義されています。現在、超音波を応用した機器は様々な産業で用いられており、当社製品にも15,000ヘルツ帯を使用した製品があります。このように「耳に聞こえる音」も「超音波機器」として扱われるため、産業界では『聞くことを目的としない音』と定義しています。

それでは私たちが聞いている「音」の正体とは何でしょうか?話し声はもちろんですが、スピーカーから出る音やバイオリンの奏でる音はどのようにして「聞こえる」となるのでしょうか。たとえば、バイオリンでは絃が震えることによって、その振動が空気を伝わって耳に届きます。この振動が耳の鼓膜を揺らし、脳が音として認識します。また、絃を押さえる位置によって振動回数(周波数)が変わり、音の高低が変化します。つまり、音の正体は「振動」であり、この振動は『波』のように伝播していきます。気体・液体・固体を伝わるこの波のことを「音波」と呼びます。

音の振動数は「周波数」と呼ばれ、Hz(ヘルツ)という単位で表されます。1秒間に1回振動する場合、1Hzとなります。振動回数が少ない=周波数が低いほど低音に聞こえ、周波数が高いほど高音となります。一般的に人の可聴域(聞こえる周波数)は20Hz~20kHzとされています。よって、冒頭で例として挙げた15,000ヘルツ(15kHz)の機器は、可聴域の周波数を使用しているため「耳に聞こえる音」となりますが、われわれの定義上は超音波として扱います。

超音波振動の原理

振動子により高周波電力を超音波振動に変換

音の正体は「振動(音波)」です。では、この振動を産業に応用するための超音波振動をどのように発生させているのでしょうか?振動は機械的な運動ですので、エネルギーと動力部が必要になります。自動車でいえば、ガソリンとエンジンに当たる部分が必要になるわけです。超音波振動におけるガソリンは高周波電力で、エンジンは「超音波振動子」と呼ばれています。

高周波電力が振動に変わる原理は、火打石をイメージしてください。火打ち石は叩くと火花が出ます。この時、叩くことで石は一瞬縮みますが元に戻ろうとする力が働き、これが電気エネルギー=火花となって現れます。この原理を逆手に取り、発振器内で圧電素子の石に電気エネルギーを供給することで振動を発生させています。

もっと詳しく!

超音波溶着の振動子に使用される素子は、発振器からの高周波電力を超音波振動に変換するもので、交流電圧を加えると振動するチタン酸ジルコン酸鉛(通称PZT)が主に使われています。このPZTを電極と金属で挟みボルト締めしたものが、ボルト締めランジュバン型振動子(通称BLT)となります。BLTは金属を介してボルト締めすることにより、超音波溶着で使用する周波数で動作するように調整されています。PZTは前述の通り交流電圧により、伸び縮みの反復運動を行います。この反復運動の距離(振幅)は数ミクロン~数十ミクロンと極めて小さなものですが、伝達・共振・増幅により加工に必要な振幅が得られます。

超音波ウェルダーとは

超音波振動によって熱可塑性樹脂の加工を行う装置

超音波による熱可塑性樹脂(熱で溶けるプラスチック)の溶着機は、超音波ウェルダーまたは超音波溶着機とも呼ばれています。超音波ウェルダーを使用している業界は幅広く、自動車の部品や各種容器、医療機器、生活用品、玩具、家電の溶着などに用いられています。
超音波ウェルダーの主な構成は、発振機と振動部、プレス機構と工具ホーンになります。工具ホーンは超音波ホーンとも呼ばれ、振動部で発生した振動を増幅しワークに伝達することで溶着を行います。また、プレスを使用せず発振器と振動部とホーンの組合せの機器もあります。

「発振器」は高周波電力の供給と共に、共振周波数の制御などを行っています。共振周波数は使用する工具ホーンごとに異なり、動作時の温度によっても変化します。また、溶着中の加圧によっても変動するため、最適な周波数に調整する「周波数追尾回路」を搭載しています。また、当社の超音波溶着機は「定振幅回路」を搭載しています。定振幅とはホーン先端振幅を一定にする機能となっており、溶着時の加圧力などにかかわらず常に設定した振幅になるように作動し、安定した溶着ができるように制御しています。
超音波振動用の電力供給と制御を行っているため、「発信器」ではなく「発振器」と表記します。

「振動部」は素子で構成された振動子(BLT)と振幅を増幅する固定ホーンで構成されています。固定ホーンの振幅をさらに増幅し、ワークに伝達するのが工具ホーン(超音波ホーン)です。工具ホーンは用途やワークにより、さまざまな形状で製作されます。工具ホーンは無暗に追加工をしてしまうと、共振周波数のズレや振動モードの悪化に繋がる可能性が高く、溶着不良やホーンの破断リスクに繋がります。そのため当社では、お客様による工具ホーンの追加工は禁止とさせて頂いております。

工具ホーン先端から熱可塑性樹脂に伝達した振動は、樹脂の内部も伝達していきます。伝達した振動は樹脂同士の接触している界面で発熱(衝突、摩擦、変形)して樹脂を溶融し、溶着に至ります。

超音波溶着の使用例では、身近なものとして不織布マスクや使い捨てのガスライターがあります。不織布マスクの外周についているミシン目や、耳ひもの付け根の跡は超音波溶着によるものです。ガスライターでは「透明の容器」と「着火部の部品」をネジや接着剤などを使わずに、超音波にて1秒以下の短時間で溶着しています。自動車の内装部品やランプなどにも超音波溶着は多く利用されています。
このように、超音波溶着は様々な分野で使用され、産業になくてはならないものになっています。

超音波溶着のメリットを簡単にまとめます。

・汎用性に優れ、熱可塑性樹脂であれば殆ど全てに適用できます。
・溶着時間は通常1秒以下と短時間での加工が可能です。
・消耗品が殆ど無く、ランニングコストが少なく済みます。
・連続溶着や多点同時溶着の構成も可能です。
・電力を要するのは発振時のみであるため、とてもECOな装置です。
・繰り返し精度に優れ、同等品質の製品を安定して生産できます。
・目的に応じた自動機への組込みも可能です。

汎用性が高く、様々な業界で利用されている

使用している業界は幅広く、自動車の部品や各種容器、医療機器、生活用品、玩具、家電の溶着などに用いられています。成形品の伝達溶着、シートや不織布の直接溶着、カシメ、インサート、スポット、ピアス、ゲートカット、トリミングなど幅広い用途に利用が可能です。
直交ロボットや多軸ロボットなど、自動化生産ラインへの組み込みに対しても柔軟に対応できます。

■自動車
内装:ドアトリム・ルーフ・エンブレム・サンバイザー・ルームランプなど
外装・レンズ:リアレンズ・ターンランプ・バンパー・リフレクタなど
その他、機能性部品やフィルター、タイヤの切断など

■医療
衛生:マスク・ガウン
機器:ダイアライザー、体温計

■電機・電子
冷蔵庫・掃除機・洗濯機・加湿器・メモリーカード・SDカード・バッテリーなど

■衛生用品
おむつ・生理用ナプキン・歯ブラシなど

■日用品
クリアファイル・インクカートリッジ・オフィスチェアなど

■包装・容器
アルミラミネート・フィルム・スパウト・ブリスターパック・チューブなど

超音波溶着の種類

周波数の選択も大事な要素

溶着物の形状や材質、溶着範囲などから使用する周波数と工法を選択します。周波数は振動の伝達距離に関わり、溶着可能なサイズや溶着部までの距離が変わります。

超音波溶着では15~40kHzが採用されていることが多く、基本的に15~20kHzの低い周波数は溶着部までの距離がある「伝達溶着」に適しており、28~40kHzの高い周波数は表面上の「直接溶着」に適しているとされています。

伝達溶着

超音波振動を成形品同士に与え溶着します。

伝達溶着

伝達溶着

超音波振動を成形品同士に与え溶着します。

直接溶着

超音波振動にてワーク表面を直接的に溶融させ溶着します。

直接溶着

直接溶着

超音波振動にてワーク表面を直接的に溶融させ溶着します。

リベッティング

プラスチックと金属、あるいは異質プラスチックに対し、超音波振動を与えてカシメをおこないます。

リベッティング

リベッティング

プラスチックと金属、あるいは異質プラスチックに対し、超音波振動を与えてカシメをおこないます。

ゲート切り

成形品のランナー 部分に超音波振動を与えて、瞬時にゲートから製品を切り離します。

ゲート切り

ゲート切り

成形品のランナー 部分に超音波振動を与えて、瞬時にゲートから製品を切り離します。

スポット溶着

重ねた2枚のワークの一方向から超音波振動を与え、ホーン接触部直下のみを溶着します。

スポット溶着

ラップパット溶着

ポリエステルフィルムなどのエンドレスシートを作る際に、つなぎ目をフィルム1枚の厚さに溶着します。

ラップパット溶着

金属接合

重ね合わせた金属に超音波振動を与え、接合界面で発生する摩擦により、
表面の酸化被膜が除去され、金属分子間の結合によって接合します。

金属接合

ワーク設計

伝達溶着を可能としている秘密は溶着界面の形状にある

超音波溶着の特長である伝達溶着を効率よく行うためには、ワーク側にも溶着に適した形状を施す必要があります。この溶着を効率化するための形状は「エネルギーダイレクター(ED)」や「溶着リブ」と呼ばれます。

溶着リブの必要性は振動エネルギーの集中にあります。伝達溶着の場合、溶着界面がフラット面同士であるとエネルギーが分散します。その結果、樹脂の溶けだし位置が不均一となり、下記のような症状に繋がります。

・温度上昇の鈍化
・溶着強度不足
・溶着時間が長くなる
・樹脂の劣化や破壊
・意匠面の溶融、キズの発生

このような症状を無くすためにも、溶着リブの設計は重要となります。