POINT
重要な要素は3つ
振動溶着の可否および溶着品質の安定性は、「振動方向」「治具質量」「溶着部形状」の3つの要素が重要となります。
振動方向と製品のセット方向
溶着部に傾斜のある製品を例に挙げます。
下記イラストは3D形状部品に対する振動方向を表しています。振動方向Aは部品形状が振動方向を妨げることがないため溶着は可能です。一方、振動方向Bでは部品形状の傾斜(角度)が振動を妨げてしまいます。
このように振動を妨げる方向に製品をセットしてしまうと、摩擦熱が発生しないため溶着は困難となります。また、振動方向Aの場合でも角度が付くと荷重が直接伝わりにくくなるため、角度のない部分よりも溶け量が少なくなる傾向にあります。
下記グラフは部品の角度と溶け(沈み込み)量を表したものです。


振動側・静止側部品の選定と治具質量
振動側・静止側部品の選定に関しては、上治具の質量が重要になります。振動側の治具(上治具)は質量範囲(制限)があります。機種ごとに異なりますが、範囲を超えた治具は搭載できないので、範囲に合わせられる部品を上側に持ってくる必要があります。
下側は治具でしっかり部品を保持できる形状である方を選択します。大きなワークを下にする場合が多いので、注意が必要です。
溶着部形状(ジョイントデザイン)
振動溶着では、左右最大約1.8mmの振動をあたえるため、振動中に溶着リブとトラップが接触しないように距離を保つ必要があります。また、角度がある場合などは溶け具合が違うため、より均等に溶けやすいデザインにするなどの対応が必要となります。
耐圧基準がある部品では、リブの形状や大きさなども考慮し、試作部品でリーク試験・耐圧試験を行い、何回か形状変更が必要になる場合もあります。

振動溶着機におけるリブ形状の5つのポイント
- 気密と強度を必要とする場合:全周外周にリブを設けること。
代表例:ランプ/レンズ・インテークマニホールド・キャニスター等の自動車部品のほか、インクタンク・トナーカートリッジ・アイロンタンクなどの事務・家電機器部品
- 強度を必要とする場合:一定の面積を確保(一様にリブを設けて)して溶着する。
代表例:グローブボックス,リテーナー
- 溶着リブの剛性
リブ幅に対して高さが適正で無い場合、加圧・振動時にリブが座屈し、溶着不良が発生する(要注意材:PP,POM)。
- 溶着リブの配置
振動方向に平行にあるリブと直角にあるリブでは、力(振動)の受け方が変化するため、配置を考慮する必要がある。
- 溶着リブ受け
リブの受け側は平らな面であることが必要であるが、成型品の受けに溝を設定し、その両端がR形状になっている場合は、以下の点留意。
- 振動で左右にリブが動いた場合、このR形状に乗り上げて接触面が離れてしまい、発生した熱が大気放出され効率が悪くなる。
- 接着面が離れない場合でもリブに横からの応力がかかり、座屈やリブの角が取れ接触面積が減る恐れがある。
これを防ぐために、相手側にもR形状をかわす高さのリブを設けるのが得策だが、そのリブの幅は振動側のリブの幅よりも大きくすることが望ましい。
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バリ除けに効くトラップとフランジ
詳細は後述の「振動溶着の課題解決」に譲りますが、振動溶着の最大の課題である「バリ発生」を最小限に抑えるためには、溶着リブの形状に加え、「トラップ」と「フランジ」の形状も重要になります。それぞれのポイントをまとめてみました。
トラップ
溶着後にワークの内側外側に溶けたバリがはみ出さないようトラップを設けます。ただし、意匠上と内部にバリが出ても問題ない場合は不要です。また、リブが想定量溶けた場合、相手側のワークにわずかに接触するか、やや隙間があく程度の高さに設定することを推奨します。
フランジ
相手側のワークに完全に接触すると溶融が始まり、そこからバリが発生してしまいますので、極力接触を避けた設定が必要です。また、上下ワークともに治具に装着した際と、振動中に遊びやガタつきがあると、接触面に充分な摩擦が起きず溶着出来なくなります。
ワークがブレないようにしっかりホールドさせるため、外周を押さえる「ブレ留め」の設計をしっかり行ってください。フランジの高さが充分に無いと、溶着中に治具から脱落するなど、ワークや治具の破損にもつながります。注意が必要です。
